Chapter 1131 - ハルソラ配信中:Part.4
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────……
──……
斯くして、おおよそ三時間。
何度か休憩を挟ませてもらいつつ。ほんの僅かずつではあるものの緊張を乗りこなし始めた相棒と、基本こちらから絡む形で賑やかしの務めを果たしつつ。
東の【勇者】から西の【賢者】へと続き、更には北の【聖女】そして南の【王帝】と巡り四柱の試練を突破した先で待ち受けていたのはクライマックス。
つまるところ、直で見ても再現映像で見ても変わりなく不気味を体現する『黒歪』ならざる〝黒〟……空間の底より湧き出た単眼を擁する巨大な竜。反して天より降臨した〝緑〟の加護を以って、ソレと相対していた最終局面が、
──────《炉花(Hibana)》
過去の俺が呟いた、必殺の宣告と同時。
現実世界に在っては当の俺ですら『なんだこれ』と首を傾げざるを得ない、ほぼ白炎灰焔の光一色に染まった一人称視点映像の奥に秘された〝一刀〟にて……。
まあ、はい。幕を下ろした、わけだが……────
「…………………………あの、ハル?」
「うん」
「え、と…………」
今配信中では珍しくソラの方から声を掛けられ、隣を見れば困り顔の極致。然らば、開き直りの極致にて可愛いなぁと暢気に構えている俺に対して、
「皆さん、つ(・)い(・)て(・)い(・)け(・)た(・)……ん、でしょうか…………?」
「いやぁ、見(・)渡(・)す(・)限(・)り(・)の(・)ハ(・)テ(・)ナ(・)で(・)す(・)わ(・)」
天使が当然の懸念を問うので、とりあえず包み隠さず現状を伝えると共に迫真のスマイルを返しておいた。立ち絵も俺とは思えないくらい愛らしく笑っておるわ。
────とまあ、そりゃそうである。
【賢者】の試練こと対〝瓦礫竜〟までは一般人でもなんとか追えるレベルに納まっていたが、次なる【聖女】のボスラッシュ時点で割かし限界点だったのだ。
なぜって、他ならぬ曲芸師(俺)の一人称視点なんだもの。
リアルスペックじゃ俺自身とて真っ当には目で追い切れねぇものを、世の方々に「ハイどうぞ」と公開して隅々まで楽しんでくださいませは無理がある。
ところどころで何やってるのか解説しようにも、映像内の俺たち(コイツら)揃って戦闘スピードが馬鹿過ぎてリアルタイム実況とか絶対に不可能。
もう本当に、いろんな意味で、どうしようもねぇなコレと。映像録画作業中、俺とリィナも揃って匙を投げたものだ────然して、それゆえに、
無(・)理(・)な(・)も(・)ん(・)は(・)無(・)理(・)と(・)諦(・)め(・)て(・)、そ(・)う(・)い(・)う(・)コ(・)ン(・)テ(・)ン(・)ツ(・)と(・)し(・)て(・)通(・)す(・)と(・)決(・)め(・)て(・)い(・)る(・)。
「…………さて。そしたら、っと」
決め技からの着地をミスってズベシャァと転がり、俺の視界が無様に上向いて固定されたタイミング。片手を上げた俺の合図に則り、映像が停止する。
ご丁寧に画面中央へ停止マークも浮かべる演出付き。自然コメント欄では一瞬前までとは異なる意味合いの『?』が乱立。なんだどうしたとザワつきだした。
といったところで……流石に意図してのファンサ(・・・・)ではないだろう。努めて視聴者を手玉に取るような振る舞いをする俺にジト目を向け、立ち絵に反映されたソレで以って少なくない連中のハートを撃ち抜いているソラへ笑みを重ねつつ────
「────以上(・・)! 突発ハルソラ配信は(・・・・・・・・・)、ここまで(・・・・)ッ!!!」
予定通り(・・・・)。
我ながら至極わざとらしく放った宣言が世界の果てまで渡った瞬間、コメント欄が驚愕と狂騒と叫喚……主に、悲鳴一色で染まり上がった。
さもありなん────だって結局、俺は解説やら何やら一切の必要義務を最初から今まで果たしていない。後でするからと匂わせまでしといてコレじゃあ……
ま、批難轟々は当然だろうて。
そうとも。だから、当然(・・)────
ここで終わりではあるが、ここで終わらせるわけがない。
「…………あの、やっぱり、もっと穏便な流れにした方が良かったんじゃ」
「いやぁ、結局こ(・)う(・)い(・)う(・)の(・)がアガるんだよ人間って奴は」
と、阿鼻叫喚の配信窓を他所に相棒とヒソヒソ。
ソラの言うことは至極ごもっともだ。落としてから上げる手法ってやつは、雑に長々と落としっぱなしでは批判を買う…………ので、早々。重ねて合図。
配信画面を通して、全世界に鳴り響くは一通の呼(・)び(・)出(・)し(・)音(・)。
然らば、一瞬。そりゃそうだろうとも、こんなん誰だって一発で気付く。一発で気付いて、即座に利口に静まるのが訓練されたオタクって生き物だ。
何故か。言うまでもない────
用意された、とっておきの〝演出〟を見逃さず、聞き逃さないためである。
刹那。呼び出し音────配(・)信(・)に(・)繋(・)げ(・)た(・)俺(・)の(・)ス(・)マ(・)ホ(・)が(・)通(・)話(・)状(・)態(・)へ(・)と(・)切(・)り(・)替(・)わ(・)り(・)、電波の向こう側から微かな吐息が世界に届く。
さすれば、嘘みたいにピタリと止んだコメントの流れが如実に表す静寂の中へ。
『…………────こんばんは?』
「ハイこんばんは────よ(・)う(・)こ(・)そ(・)姫(・)様(・)。出(・)番(・)だ(・)ぞ(・)」
響いた声音に、音なき歓声が爆発した。
もう到底のこと目で追えない的な意味で表示させとく意味もナシと、潔くコメント窓を閉じながら。ソファで和む『俺』と『ソラ』の傍ら、ポンっとコミカルなエフェクトと共に現れた三人目────スンと無表情なミニキャラを眺めつつ。
「ってわけで…………まあ、ハイ、あれです」
『ん、ただでさえ長い映像時間に加えて解説まで……となると』
「三時間ぽっち(・・・・・・)じゃ、とてもとても足りないもんで」
『ハルはともかく、配信が初めてのソラは大変』
「どころの話じゃないってか、普通に無理なんでね。つまるところ……」
『ん……────ここから、Part.2』
言葉を、連ね連ねて。
『解説、および考察については……』
「キャストを一部変更して、第二幕へと移らせていただきます────ってな」
これでおそらく、不満や非難など遥か彼方へ吹っ飛んだろうて。
斯くして、ブース外の仲間たちとアイコンタクト。諸々の切り替え作業に際して慌ただしく動いている美稀たちと身振り手振りで意思疎通をしつつ……。
「そういうことで、一旦この枠は閉じさせてもらうけども」
『三十分後。夜(・)更(・)か(・)し(・)枠(・)として再開予定』
「まあ、そう。深夜突入は間違いないだろうから……」
『良い子は、ちゃんと夜更かしせずにベッドへ入ること』
「そちらも無理はなさらずってことでね。勿論アーカイブ残りますんで」
『余裕のある時間に、ゆっくりと見てほしい』
電話越し、天使からバトンを受け取りに馳せ参じた姫様と連絡を述べ────
「んじゃ、ソラさん」
「っ、は、ふぁいっ……!」
察するに、いつもいつとて頼りになり過ぎる『お姉さん』が来たことで思わず気が抜けたのだろう。フライング気味に隣のブースでヘニャついていた相棒を呼ぶ。
然して肩を跳ねさせて反応したソラは、性懲りもなく可愛いなぁとニヤつきを抑えられなかった俺を恥ずかしそうに睨みながら。
「え、と……アイリスさんっ」
『ん』
「その……────あとは、よろしく、おねがいしますっ……!」
『ん、任せて。……頑張ったね、偉い』
意図してか否か、これはこれは激しく需要を満たすであろう絡みを供給。そうして次幕への引き継ぎを無事に終えたことで……。
「ではでは、また」
「はいっ、えと、また(・・)……! あの、ぁ、ありがとうございましたっ……!」
ハルソラ初配信は一旦の了と相成った。
[Author's Note]
はい、これが残りの一話ですね。ハルソラ配信の、ね。