Chapter 1139 - 野郎会
「────悪かったってば。ゆうて君(ハル)なら普通に着地すると思うじゃん?」
「着地というか、着天?」
「【Clown】様もヒトの子、ということかなぁ」
斯くして、一幕より数分後のこと。
「……………………………………人を祝(・)い(・)殺(・)し(・)た(・)連中のノリか? これが」
俺はUni、オーリン、Fuji-sanの南陣営序列上位仲良し野郎どもに連れられて、祝福騒ぎの冷めやらぬ集会場から脱出を果たしていた。
現実現在時刻は朝の七時。家族の朝食を用意しないとだのなんだのと言ってログアウトしていった非妻帯者(Record)氏、駄弁りは若者たちで楽しむといいと言って輪に加わるのを遠慮した八咫さん。二人を除いて、男性陣が俺対応(・・・)に回った形だ。
女性陣は言わずもがな、今頃Asheを囲んでキャイキャイ楽しくやっていることだろう。まあ約一名は相変わらずスヤスヤだろうが────
ともあれ、然して、場所は王城エルファリアの談話室。
陣営気質には似合わないと言ってしまっていいものやら、どこか清楚な白を基調とした東陣営戦時拠点(Ruvalest)とは異なる色調と雰囲気。
高貴さと温かみが上手いこと調律された赤色基調。そんな駄弁り場にてソファへ納まり……というか、納められ。数分前に無事ワンキルを喰らった俺は、怒るべきか畏まりを継続するべきかと悩む合間に表情を決めかねていた……と、
「ハル」
「あい」
また、一言目はUniから。
飄々とした立ち振る舞いや言葉選び。オーリンを筆頭に事あるごと弄られていたり、またそれをヨシとして受け入れているキャラクター性。そういった一面から勘違いされがちだが、その実この男しっかり南陣営の指揮格者No.3。
カリスマ含め全部乗せのAshe、頭脳特化のHelenaさん、そして現場特化(・・・・)の【Heavy Tank】様だ。これで場を仕切ることが多い外見少年は名を呼ぶと共に、
「────おめでとう。揶揄い抜きだよ」
「………………おう」
常の茶化した色を抜いて笑んでくるものだから、年下男子は怯むのみだ。
「まあ、わ(・)か(・)っ(・)ち(・)ゃ(・)い(・)た(・)が(・)……なぁ」
「うん、予(・)想(・)通(・)り(・)で(・)は(・)あ(・)る(・)……けどねぇ」
そして、男同士の幼馴染らしい腐れ縁ペア。こちらも公開情報に偽りなければ俺の年上、オーリンとFuji-sanも揃って至極しみじみ言うのだから堪らない。
「実際に叶うと、嬉しいもんだわ」
「なに目線だよって、自分たちでも思うけどね」
……本当に、堪らない。親戚の兄ちゃんかよと。
「まあ、あれだよ。────あんなんだけど、結(・)局(・)ア(・)イ(・)リ(・)ス(・)っ(・)て(・)末(・)っ(・)子(・)だ(・)し(・)」
「それなぁ。近くで親身に接してると、実際それ味(・・・)を感じることが多々……」
「兄姉面とまでは言わないけど、気付けば見守る感じになっちゃったんだよねぇ」
「親戚の兄ちゃんかよ」
────とのことで、俺のツッコミは口に出して然るべきものであったらしい。純粋に柔らかな三者の表情および声音から、冗談の色は感じ取れないゆえに。
いや、まあ……。
「………………お(・)姉(・)さ(・)ん(・)キ(・)ャ(・)ラ(・)で(・)は(・)な(・)い(・)、ことは同意するけども」
「お「お「お」
「どういうコンビネーションだよ。三つ連なって『おー』になってたぞ」
言いたいことはわかると乗ってみれば、兄貴面三連星はニマっと表情に笑みを宿した。しまったスルーが吉だった……なんて、顧みても遅いだろう。
「………………」
まあ、いいか。
気(・)遣(・)っ(・)て(・)く(・)れ(・)て(・)る(・)ってのは流石に察せられる。適当に駄弁っていくとしよう。
「……スペックのゴリ押しで結果的に大人顔負けってか人類顔負けの『お姫様』が顕現してるだけであって、実際問題アイツは俺に匹敵する『お子様』だろ」
「ほ「ほ「ほう」
「それやめろ。順調に腹立ってきた」
とまあ、その『お子様』に普段から完封勝利を攫われ続けている俺が言えた立場ではないが、事実は事実として違わず見ているとも。当たり前である。
「────曲げない(・・・・)、揺れない(・・・・)、顧みない(・・・・)。曲げないのは、曲げる必要がないほど他より突出したスペック頼み。揺れないのは信じられんレベルで頑固一徹に意志が強いだけ、それはそれとして拗ねる時は世界規模で拗ねる。顧みないのは、何が起きたとしても起きてから処理すれば間に合うと思ってる絶対無敵な自信の顕れ」
なぜって、んなもん答えは一つだけ。
「能力と性根の二重保証によって子供であることを赦されてる、いろんな意味で人類には文句の言いようがない、完(・)全(・)無(・)欠(・)の(・)『お(・)子(・)様(・)お(・)姫(・)様(・)』だ(・)よ(・)。Asheは」
惚れた女のことなんだ。見惚れ続けりゃ、自然と気付くに決まってる────
「うわ」
「しんど」
「珈琲が欲しいね……」
なんて、故意に放った惚気爆弾は狙い違わず着弾確認。
保護者に『俺だって知ってるマウント』を取るガキそのものなムーブで大変に居心地が悪いが、煽ったのは向こう。こちらがメンタルを擦り減らしたら負けだ。
「揶揄い抜きじゃなかったので?」
ので、至って強気に立ち回れば「はは」とUniから笑み一つ。
「許してよ、嬉しいんだって俺たち。そりゃ口も軽くなるよね」
またしても文句を言い難いことを躊躇なく零すものだから、始末に負えないとはこのことだ。無敵化は、どうやらお互い様であるらしい。
…………あるいは、
「それに、なんたってアイリスだからね。あとはもう本ッッッッッ当に、なんの心配も要らないなーって手離せちゃう(・・・・・・)のが無限に楽。安心しかないから喜ぶだけ」
「それな。お梅のやつも言ってたけど、もう逃げられないぜ兄弟?」
「それね。君の末永く幸せな旦那様ライフは確定した未来だ」
「……このシスコン家臣どもが」
流石に、年季の差。
Asheことアリシア・ホワイトに対する信頼の蓄積に関しては、悔しいが俺を凌いでいることを認めざるを得ないだろう。あぁ、そうさ。
だからこそ……────俺とAsheが結ばれてエンディング、という形で状況が終わったわけではないということを、間違わずに察しながらも。
この人たちは、俺たちに心からの祝福をくれたんだ。
曲げず、揺らがず、顧みず。どうあっても最後には最良の結果へ辿り着く。それを今なお証明し続けている姫君を、彼ら彼女らは疑っていないがゆえに。
……そして、気のせいでなければ。
「ま、頑張りなよ! アイリスの夫なんて楽な仕事じゃない……どころか、ある意味で世界一の難職かもしれないけど、そこはそれ世界一美人な妻で相殺でしょ」
「なんとかなるべ! 規格外には規格外が似合いってな!」
「所誠は兄姉面だけど、なにかあれば頼ってよ。可能な限り力になるからね」
ほんの僅かばかりでも、俺への信頼もチラつかせながら。
当然のように気遣ってくれる得難い友人たちへ、俺は返すべくして────
「……と気持ちよく応援する体で、少なからず面白がってますよね?」
生意気半分、冗談半分、感謝はプライスレスの戯言を投げれば、
「う「う「うん」
「やめろってんだよソレ。最早ただの唸り声になってんぞ」
気のいい彼らは、やはり当然の如く。親愛の冗談で返してくれた。
[Author's Note]
一方その頃、無限に惚気て至極ご満悦なAshe。なんだかんだキャーキャーニャーニャー楽しそうな白猫(Nassen)。絶えず質問攻めにする意外と恋バナに積極的お梅さん。騎士甲冑姿で普通にワイワイガションガション女子女子してる騎士様。隣で姉ってか母親ばりに至っている慈愛の微笑を展開しつつ穏やかに見守るHelena女史。
そしてスヤスヤの【城主】様。我関せずだけども早朝とて呼ばれたら一応ちゃんと来るの偉い。